★★★ 媚薬と呼ばれたハーブたち ★★★
●反媚薬 -- 制淫剤の話 --
媚薬ほど華々しくもてはやされるわけではありませんが、制淫剤も古くから関心を持たれてきました。
貞操を守るために、身持ちをよくするために、淫夢から解放されるために、また宗教上の理由からもそれは必要とされてきました。制淫効果があるとされる薬草には実際に精子を殺したり、堕胎させる成分を含んだものがあります。
一方全くおまじないに過ぎないものもあります。また少量用いるなら催淫剤に、度が過ぎると制淫作用を起こすものもあります。
ローマ時代の有名なプリ二ウスの『博物誌』には、多くの催淫剤とともにいろいろな制淫剤についても記述されています。また性欲を妨げるとされる植物、動物がたくさん挙げられています。
野莱については現在の改良栽培種とは異なります。他の植物についても同定できませんが、レタス、コショウソウ、ヘンルーダ、スベリヒユの1種、アサの種子、ヤナギ、イタリアニンジンポク、白スイレンなどです。
動物についてはおまじない的なものが多く、オオヤマネコの皮と爪の灰を振りかける、シカの皮のお守りをつける、オンドリの睾丸を床の下に置くなどで、スキンクス(大型トカゲ)のスープを蜂蜜とともに飲むというのもあります。
この中で成分と作用がはっきりしている薬草を次に挙げてみました。
その前に、エッセンシャルオイルを忘れてはいけませんね。あるんです、そんな香りが・・・。
◆マージョラム
やや甘く、フレッシュなハーブ調の心地よい香りで、穏やかな落ちついた気分にしてくれます。
芳香器や加湿器、エアコンの風を使ったり、ルームスプレーを作っておいて、シュシュッとやるのもいいでしょう。
よからぬ気持ちを鎮めて、仕事に集中してもらいましょう。
◆イタリアニンジンボク(クマツヅラ科)
ヨーロッパ南部原産の落葉低木で芳書があります。ギリシアのアテネの未亡人たちが貞操を守るために、ベッドにこの葉を撒きました。『博物誌』では、激しい性欲を抑えるとされ、「ベッドの下にこの枝を置くだけでも効果がある」と記されています。後の時代には修道士が純潔を守るために種子を粉末にして胡椒のように用いました。チェイストトリー(純潔の木)、和名ではティソウポクと呼ばれます。種子には男性の性欲を抑制するホルモンに似た成分が含まれています。これは更年期の抑鬱症などのホルモン分泌に関係した症状の治療に使われます。
◆ヤナギ(ヤナギ料)
日本にも広く分布する落葉低木−高木で数種類あり、『博物誌』には「葉を細かく砕いて服用すると激しい情欲を抑えるが、多量に用いると勃起不能になってしまう」とあります。ヤナギの葉に含まれるサリシンは、体内でサリゲ二ンを経てサリチル酸になり、これは中枢神経を麻痺させ、血圧降下を引き起こします。
◆へンルーダ(ミカン料)
∃−□ツパ南部原産の半常緑多年草。ヘンルーダについては「食用にすると生殖力を妨げる、遺精や、しばしば淫らな夢に悩まされる場合に用いる」と述ペられています。
葉に含まれる精油の主成分は、メチルノ二ルケトン、メチルヘプチルケトンです。野菜のように多重に食べると男子の精子を殺し、女性には堕胎を引き起します。
古代□−マの頃から、この香草を戸口につるして魔除けにする風習がありました。また、中世には娘を悪い虫(男)から守るために身につけさせる護符でもありました。
ヘンルーダの解毒作用はよく和られていて、かのミトリダテス王の解毒剤の主成分でしたが、『博物誌』に面白い記述が見られます。「性器を激しく興奮させる毒を持った蜘蛛に咬まれたときの解毒剤である」と。
身近なところで、制淫的作用をするのは、コ−ヒーやアルコールの飲みすぎなどです。適量ならコーヒーは興奮系媚薬の代表、アルコールは陶酔系媚薬の代表ですが、ビールに添加されるホップには、女性ホルモンに似た成分があるので、飲みすぎは男性のヤル気を弱めるかも。
|